少し前になりますが、メルカリが病休制度を導入したという記事がありました。
メルカリが新休暇制度導入 有休以外に病欠用の休日を10日間、夏休みは好きな時期に3日間に – ITmedia ビジネスオンライン
そういうわけで今回は病休と日本の労働環境について書いていきたいと思います。
人手不足と言われている今こそ待遇改善を
上記のページは記事というより、ニュースというべきもので、ものすごく短いので興味がある人はさっと目を通してみると良いと思います。
要するにこういうことです↓
メルカリは7月1日、組織のグローバル化に合わせて2つの新しい休暇制度「Sick Leave」と「リラックス休暇」を導入したと発表した。
“Sick Leave”というのは「病休」のことで、有給とは別に病気の時に取れる「給料あり」の休暇のことです。
オーストラリアではSick leaveとか、略してSicky(シッキー)などと呼ばれています。
オーストラリアでは病休が法律で定められているわけではありませんが、病休が無い会社のほうが少ないのではないかと思います。
また、他の国のことは知りませんが、恐らく先進国の中では病休が普通にある会社が多いのではないかと思います。
待遇が悪い会社はどんどん社員が辞めていってしまうので、必然的に良い待遇にしないとならないわけです。
こういう点でも、雇用の流動性というのは労働市場を健全に保つという意味でとても大切だと思います。
雇用の流動性が低い日本の社会では悪い待遇でも辞める人が少なく(「辛いけど我慢!」という人が多いということ)、ブラック企業がはびこる一つの原因となっています。
現在、日本は人手不足が叫ばれていますが、なぜかその解決策として外国から安い賃金で働く人を入れようとしています。
それは違うでしょう?
まず、良い待遇を用意して良い人材に来てもらい、利益を上げようとするのが自然なはずなのに、待遇を良くするどころか、人件費を削り、サビ残をさせて従業員から少しでも多くの労働動力を搾り取らないと(「盗み取る」のほうが正しいですが)「会社が成り立たない」などとほざいている日本の無能経営者たちについては疑問を感じざるを得ません。
後述しますが、海外から安い労働力を入れてもし一時的に人手不足を回避できたとしても近いうちに破綻すると私は予想しています。
そういう点で、今回のメルカリの待遇改善は素晴らしいものだと思います。
まともな国だったら病休があることなど当たり前でニュースにもならないので、本来は称賛するべきことでもないはずなのですが、この腐りきった労働環境の日本でそれをやるということは大いに褒められるべきだと思います。
私がいた豪企業の病休
ではメルカリのこの病休制度が海外のまともな国の企業並みであるかというと、正直、「悪くないけど、もう少し及ばないな」と言ったところです。
例として、私が働いていたオーストラリアの現地企業の病休を紹介しましょう。
病休は年20日付与
まず、与えられる病休日数は年20日でした。
メルカリの倍ですね。
これだけあれば残り日数を気にすることなく使えます。
無制限で繰り越しOK
使わなかった病休は無制限で次の年に繰り越されます。
(冒頭に紹介したITmediaビジネスオンラインの記事ではメルカリが繰り越しを許可しているのかは触れられていないので、この点では比較はできませんね)
私の同僚の中には、病休が100日近く貯まっている人もいました(笑)
病気以外でも利用OK
実はその会社では個の休みのことを「病休(Sick leave)」ではなく、”Personal leave”と呼んでいました。
なぜ病休ではなく、そんな呼び方がされていたかというと、本人の病気の時以外にも色々な場面で使えたからです。
- 妻(夫)や子供、親などの家族が病気の場合はもちろんOK
- 定期的な通院
- 妻(夫)が病気や通院、その他の理由で本人以外に子供の世話をする人がいない場合
- 宗教的、文化的理由の時 ー 例えば中国人の新年(旧正月)やムスリムのラマダーンなど。年に5日間まで利用可能。宗教的に働かない日というのがある国もあると思いますが、日本人の私の場合、「働いてはならない」という日が文化的、宗教的には無いわけですが、取らなければ損(笑)なので天皇誕生日や憲法記念日などで取得していました。日本で祝日の日であれば許可されていました。
- 引っ越し ー 年に1日だけですが、引っ越しの時も利用できました
最後の「引っ越しで休める」なんて日本人からしたらびっくりだと思います。(最初は私も驚きました)
日本だったら「引っ越しなんて週末にやれよ」と言われるのがオチで、そんな理由で仕事を休むなんてとんでもないという文化ですからね。
リラックス休暇
ついでに、記事中にあった「リラックス休暇」についても触れておきましょう。
一方リラックス休暇は、これまで取得時期が7~10月となっていた夏季休暇を好きな時期に取得できるようにしたもの。さまざまな国籍の社員が働いていることを踏まえ、各国の長期休暇や社員それぞれの事情に合わせて休暇を取れるようにした。
私がオーストラリアで働いていた会社にはこういう制度はありませんでした。
ちなみに、オーストラリアでは夏季休暇はありませんでしたが、「クリスマス休暇」というものがあり、12月24日から年始までの1週間程度が強制的に休みになっていました。
その期間にはクリスマスデーを含めて祝日が何日かある関係で、平日は大体3日程度なのですが、そのうち1日だけは会社が特別に有給を与えてくれ、その他は有給の残りから強制消化させられていました。
私はこの休暇が好きな時に取れたら良かったと思っていましたので、この点ではメルカリの制度のほうが優れていますね。
日本の労働環境が変わるべき時
まともな先進国の企業では有給の他に病休があるのは普通のことです。
今回のメルカリのように病休の導入が話題になること自体、日本がいかに労働環境において世界に後れを取っているかを物語っています。
これだけグローバル社会だのなんだのと言われている割には、日本の労働環境の酷さは石器時代並みです。
日本では「有給は病気でどうしても出社できない時に頭を下げて頂くもの」みたいな社畜丸出しの認識をしている人がたくさんいるようですが、有給に対してそんな認識である国民は恐らく先進国の中では日本くらいなのではないかと思います。
今後、病休を始め、待遇を他の国並みにまともにしていかないと優秀な人材は日本の企業など見向きもしなくなり、海外の企業と渡り合っていくことなどできなくなるでしょう。
事実、既にそういった傾向は出てきていて、「日本に観光に行くのは好きだけど日本では絶対に働きたくない」ということを言っている人がオーストラリアでも結構いました。
日本の労働環境がどれだけ酷いかは海外でも有名だということです。
日本の労働者に今何ができるか
ここまで読んで、「海外の労働環境が良いのは分かった。それじゃどうしたらいいの?」と思う人もいるでしょう。
残念ながら、この日本のクソ労働文化は何十年もかけて積み重なってできたものなので、一朝一夕に変えられるものではありません。
「じゃあ私たちに一体何ができるのか?」ということですが、これは日本人ひとりひとりが海外と比べて日本がどれだけ労働後進国であるかを認識していくことが第一歩だと思います。
多くの人がそのことを認識し、「より良い国内企業に転職しよう」「もっと良い環境の海外で働いてみよう」と考えるようになったら、人材が集まらなくなった企業は待遇を良くして人を集めるしかなくなります。
低賃金の外国人労働者なんて使ってなんとかできる企業はほんの一握りでしょうし、現在日本に来ている外国人たちは日本の現状の酷さを知らない人達ばかりです。
彼らが日本で酷い目に遭って母国に帰って真実を伝えれば、わざわざ日本に奴隷になりに来る人などいなくなります。
実際、インドネシアなどでは日本で過労死したインドネシア人労働者の話がニュースになっています。
日本よりましな環境で働ける国など他にいくらでもあるのですから、日本を選ぶ必要なんて無いのです。
こうなったときに、人件費を削って労働者を奴隷のように使わないと利益が出せないような会社がどうなるか見物ですね。
「『日本に住んでもいいよ』という条件を付ければ日本に住みたがる人はたくさんいる」「日本に労働者が押し寄せてくる!大変だ!」などとお目出たいことを信じているのは海外を知らない日本人くらいなものでしょう。
現在の日本人労働者のように「お給料を頂いているのだから責任感を持って~」などと言ってサービス残業をしたり、「有給をホリデーで使うなんてとんでもない・周りに迷惑。有給は病気でどうしても出社できない時に頭を下げて頂くもの~」などと、会社に媚びへつらっている人が多い状態では絶対に良くなることは無いということをよく覚えて置いてください。
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